200417

2年前の1月から、月に1回集まってお酒を飲む会がある。メンバーは、小学校の頃からの幼馴染のぐちゃん(男)と、中学校の頃から仲良しのしーちゃん(女)だ。

いつもの居酒屋”楽”で開かれることが多く、ツキイチカイサイというグループLINEで「楽?」や「今日やんな?」と合言葉のような突然の収集がかかる。だいたいはのぐちゃんからの収集で、当日の夜にいきなりLINEが来る。1回だけ、私としーちゃんどっちもすっぴんの時があった。断ったが、結局女2人にその日2回目の化粧をさせてその月の飲み会が開催されたことがあった。のぐちゃんは人懐っこさが売りなので、それに負けてしまうことが多々ある。”楽”という居酒屋は、沖縄料理のお店で、いつも仲のいい夫婦2人が「いらっしゃい」と迎えてくれる。それぞれの家から5~10分の所にあるというのもあるが、ほぼ毎月の集合場所に選ぶ一番の理由はゴーヤチャンプルがおいしすぎる点にある。しーちゃんが彼氏と沖縄旅行に行って帰ってきた月に開催されたツキイチカイサイでゴーヤチャンプルを食べながら、「やっぱ楽のゴーヤチャンプルが一番おいしいわ」と言っていた。私たちが毎回ゴーヤチャンプルを頼むので、嬉しそうに「今日もゴーヤチャンプル?」と聞いてくれるママが可愛い。大学卒業祝いや、彼氏彼女が出来た祝い、就職先が決まった祝い、就職祝い、失恋見舞い、(のぐちゃんが骨折したときに)退院祝いなど、事あるごとに1杯サービスしてくれる優しいマスター。とても居心地よくて、いつもありがとうございますと伝えると、私たち(常連の中ではとても若い)3人が毎月集まってくれるのが嬉しいと言ってくれる。

しかし、のぐちゃんが今月の4月から仕事の関係で遠くに行ってしまうのでツキイチカイサイは2年3ヶ月をもって途切れてしまうことになった。とても寂しいが、のぐちゃん帰省のたびに会おうと言って3月20日に最後のツキイチカイサイを終えた。そのはずだったが、3月29日の夜にまた突然のぐちゃんの収集が入った。平日で、次の日仕事だったしーちゃんは参加できず、ニートの私が「1時間だけな」と言ってまんまと乗っかることになった。私が先にお店について、ママにカウンターの席へ案内され座った。しばらくするとのぐちゃんが来た。お互いの恋愛事情や最近どうなんというような他愛無い話をした。それでも、よく話してくれるしーちゃんがいないと静かだ。話が落ち着いてきたところで、ママが話しかけてくれた。のぐちゃんが次の次の日に地元を離れることや、私たちが集まってくれて本当に嬉しいということを、常連の”梅ちゃん”という、3席ぐらい離れたところに座っていたおじさんに伝えながら。それから、ママが「まだ飲める?」「一緒に飲みたい」と言ってワインを1瓶開けてくれた。大好きな赤ワイン。おつまみのチーズとナッツをくれて、私とのぐちゃんとママとマスターと梅ちゃんで乾杯をした。その日初めて話したおじさんとお店の夫婦と幼馴染と同じワインを飲みながら、私たちが知っている限界の昔の歌手やアニメ・漫画、テレビ番組の話で盛り上がった。結局2瓶開けた。最後はママとマスターとのぐちゃんと写真を撮った。梅ちゃんが撮ってくれた。長く押し過ぎたみたいで連写された。カシャカシャカシャカシャカシャカシャという音にみんなで笑いながら、これしーちゃんやきもち焼くなあと思った。こんないい日、しーちゃんにも来てほしかった。

日付がとうにまたがった時間に店を出て、5分歩いて私の家に着き、まだ引っ越しの準備ができていないというのぐちゃんとバイバイした。

それから1週間経ち、新型コロナの感染がとうとう深刻な状態になり、自粛ムードが強くなった。わたし自身、東京から帰ってきた親友とのさし飲みもやめたし、必要最低限家から出ないようにするようになった。日本全体で自粛ムードが漂う中、オンライン飲みというのが流行っていた。正直、味気ないと思っていた。

4月17日23時頃、ツキイチカイサイLINEにのぐちゃんがURLを送り付けてきた。いつものように寝床につき、携帯でドラマを1本見て寝ようと思っていたところだった。LINEを開いてみると、オンライン飲みの誘いだった。まんまとZoomのアプリをダウンロードし、収集に乗った。冷蔵庫にあった、まるのワンカップとレモンサワー1缶と柿ピーわさび味を急いで取りに行った。部屋着ですっぴんのしーちゃんと、のぐちゃん。久しぶりな感じはしなかったものの、状況が激しく変化している中でいつもの雰囲気とトーンでする会話が懐かしく感じた。気づくとお酒もなくなり、2時半まで話していた。話していたといっても他愛無い、いつもの会話だ。

味気ないと思っていたオンライン飲み流行のおかげで、ツキイチカイサイ27回目が開催された。

それから歯を磨いて、すぐに寝た。