200520

母が仕事の帰りにチーズケーキを2つ買ってきてくれたらしい。何か映画を観ながら食べることになった。あまり重たくないようなアニメ映画を観たいという希望をもらったので、Amazonプライムビデオのページをゆっくりスクロールしていった。言の葉の庭は観たし、何にしようかとさらに下へ進めていくと秒速5センチメートルを見つけた。13年前の2007年に作られた新海誠監督の映画だ。少し気になっていた作品だったので、予告編を見てから、これにしようと母と決めた。

部屋の電気をオレンジの小さい灯りにして再生した。映画が始まり、チーズケーキの周りのフィルムをはがして一口食べた。ふわっふわでチーズの酸っぱさも相まって甘すぎず、口の中ですぐに消えてしまった。おいしいと声に出さずにはいられなかった。

3つの短編の物語に分かれていたが、主人公の少年の成長を軸に繋がっていた。1つ目は小学生から中1の頃の話。2つ目は高校生の頃で、3つ目は社会人になってからの話だった。ハッピーエンドとは言えなかったと思う。でもバッドエンドとも言いきれない。その先を良いようにつけ足したくなるような、何通りにも続きが見えてきそうな、そんな終わり方だった。文字通り、青春と呼ばれるはっきりしないものの青さを感じ、自分の過去を振り返りたくなった。

この映画を見て、確かに青春を感じたし、自分にも青春をした!と言い切れるような恋愛があったか考えた。「僕たちの前にはいまだ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく横たわっていた」という最初の物語でのセリフがとても印象に残っている。まだまだその先なにが起こるか分からないし、何も知らないからてきとうにするなんて難しくてできなかった。ただその後を予想して考えるよりも先に、気持ちのまま行動に出ていた。だからこそ起きてしまう失敗や後悔も、その頃はものすごく大きくて黒かった。この恋がわたしの全てで、この先も続いていくんだと確信していた分、失ったときの絶望は信じがたいものだった。時間が解決してくれるという言葉の意味がまるで分からなかった。時間がたっても、燃え続けるろうそくの火は揺れながら熱をもって確かに私の中で長居し続けていた。薄くなる酸素によって消えかけた時が何度もあったけど、その大きな何かで遮り守られてしまうことが憎かった。やがてろうが溶けてしまい無くなることを願いながら大事に守っていたのは私自身だったのかもしれない。ある日突然吹いてきた風が、自分でも気づかない間にろうそくごと追いやってくれていた。この先もずっと続いていく人生、何があるか分からないと思った。まだまだ青春も終わっていないのかもしれない、と子どもでもなく大人とも言い切れない24歳になる手前で考えている自分が少しむずがゆかった。

お風呂に入り、髪の毛を乾かしながら、久しぶりに過去を振り返って青春を思い出していた。あの人や、あの時毎日のように顔を合わせよく遊んだ友達が今頃何をしているのか気になったりもした。確かにあの頃、青春というはっきりとしないものの真ん中にいたことを何年も経ってから違うところで振り返っていた。

ハッピーもバッドもつけない終わり方の映画はいいなと改めて思った。